人は思い通りにならないと「不満」を感じます。通常はコミュニケーションを通じて、解決しようと試みますが・・・。
そうではなく
【約束を破る・さぼる・遅らせる・黙る・態度が悪くなる・不機嫌になる・否定的になる・敵対的になる・(頻繁に)不平不満・批判・愚痴・デマ・恨み言・皮肉・陰口】
このように直接相手に主張することはせず、拒絶的または受け身的なやり方で「不満」を表現する人達がいます。
ですが、彼(彼女)らは当ブログで頻繁に登場するナルシスト、反社会性タイプ(サイコパスやソシオパス)などの危険なパーソナリティーのように「称賛」や「利益」等の明確な目的でこのような振る舞いをしているわけではありません。
一見すると危険性は然程ないように思えます。
とはいえ、仕事では不満になると意図的に作業効率を落とし、生産性を悪化させ、人間関係では不規則に強いストレスを放ち、更に他者依存的で同調圧力に弱く、場合によっては「いじめ」の加害者側に属します。
今回はこのような特徴を有するタイプ『受動攻撃性パーソナリティ障害(PAPD)』についてご紹介します。
・当記事はDSM-4-TR基準(研究用基準案)を一部参考にしています。ちなみにDSM-5で受動攻撃性パーソナリティ障害は「その他の特定不能のパーソナリティおよび特定不能のパーソナリティ障害」に分類されます。※DSMはアメリカ精神医学会による診断基準のこと
受動攻撃性パーソナリティ障害
受動攻撃性パーソナリティ障害(PAPD)は下記の名称でも呼ばれます。
・拒絶性パーソナリティ障害
・パッシブアグレッシブパーソナリティ障害
・ネガティブパーソナリティ障害
参考:1)2)
PAPDを抱える人達は「不満」や「怒り」を覚えると、敵意や攻撃性を隠し、間接的に不平不満や批判、愚痴、デマ、恨み言、皮肉、陰口を口にします。
一例を挙げると、○○について【人任せ・了承した・合意した】にも関わらず、不満になると手のひらを返し、先述のような行動をとります。提案や相談など「自発的」な解決手段はとりません。ひたすら受動的な態度や振る舞いで不満をあらわします。
つまり、明確な目的は無く、とにかく「不満」や「怒り」を晴らしたいという幼稚で、他者依存的かつ衝動的で自己破壊的な行動。
いわゆる重度の「不貞腐れ(ふてくされ)」。
これでは互いの不快度が増すだけで、状況は一向に好転しません。
下記はDSM-IV-TR(研究用基準案)によるPAPDの診断項目
A. 適切な行為を求める要求に対する拒絶的な態度と受動的な抵抗の広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになる。以下のうち4項目(またはそれ以上)によって示される。
・日常的な社会的及び職業的課題を達成することに受動的に抵抗する。
・他人から誤解されており適切に評価されていない不満を述べる。
・不機嫌で論争を吹っかける。
・権威のある人物を不合理に批判し軽蔑する。
・明らかに自分より幸運な人に対して、羨望と憤りを表現する。
・個人的な不運に対する愚痴を誇張して口にし続ける。
・敵意に満ちた反抗と悔恨の間を揺れ動く。アメリカ精神医学会 精神障害の診断と統計マニュアル、IV-TR
B. 大うつ病エピソードの期間中にのみ起こるものではなく、気分変調性障害ではうまく説明されない。
受動攻撃の主な例
下記は受動攻撃の例でもあり、「PAPDを抱える人」または「PAPD的な傾向がある人」の特徴でもあります。
・上司(または同僚)、雰囲気が個人的に気に入らないのでさぼる
・自分の基準で相手を評価する(例えば新卒相手に自分同様のやり方や生産性を求める。基準以下であれば皮肉や陰口で愚弄するなど、受け止め方がとにかく主観的である)
・イベントや共同作業で不満になると悪態をつき、雰囲気を悪くする
・頑固で他人のせいにする
・自分自身が責任を負わないように小細工をする
・他人が求めていることを忘れる
・頻繁に不平不満を口にする。頻繁に悪態をつく
・物事を平然と延期する
・基本的に敗北的でマイナス思考。また、何かにつけて【人・環境・出来事】などを口実にし、努力しない
・仕事仲間のミスを発見しても伝えない
・うわべでは笑顔で【感謝・賛同・称賛】するが裏では【怨嗟・反対・罵倒】する
・ある人の言動が気に入らないので、その人に対する不快なデマを流す
・「いじめ」の被害者側にいることが不満(または不安)なため加害者側に立とうとする(他者依存的で同調圧力に弱い)
・おとなしいタイプのターゲットを選定し、不満や怒りを受動攻撃で解消する(悪質なケース。後述するが、今日の日本における「いじめ」に多い形態でもある)
・指示を正確に実行せず、自分のやり方を付け加え、主張する
・自分が持たない要素【技術・能力・成功・努力・恋人】を有する、【兄弟・友人・仲間・恋人】に対して、嫉妬し【否定的・敵対的】になる
ちなみに上記のような受動攻撃に関する一部の特徴は境界性、演技性、妄想性、依存性、反社会性、および回避性パーソナリティ障害のある個人においても頻繁に発生します2)。心理学者のセオドア・ミロンによると、中でも反社会性タイプ(サイコパスやソシオパス)が放つ受動攻撃は非常に厄介。彼(彼女)らの受動攻撃には悪意があり、間接的で回りくどい迷路のような手法であるとのこと3)。ガスライティングについて
悪質な受動攻撃
「PAPDを抱える人」または「PAPD的な傾向がある人」は反社会性タイプ(サイコパスやソシオパス)やナルシスト、サディスト、マキャベリスト等の良心や共感性、罪悪感が欠落している危険なパーソナリティーと異なり、基本的に強い邪悪性はありません・・とはいえ。
例えば、担当者や責任者、作業内容、雰囲気、メンバーなどの何かが気に入らないから、「不満」が溜まる。だから【おとなしい人・優しい人・反抗しない人】をターゲットにして【陰口・デマ・悪戯・皮肉】などの『受動攻撃によるいじめ』で不満を解消するといったケースは最悪です。
PAPDの原因
受動攻撃性パーソナリティ障害(PAPD)は欲求不満や怒りを制限された発達期(または特定の小児期)の影響【アルコール/薬物中毒の親、いじめ、虐待】に起因する可能性があるといわれています。
つまり、素直な感情表現が禁じられている家庭では、子供の感情が抑圧されてしまい、別の行動で欲求不満を表現するようになるわけです。
例えば、怒りを表現することに肉体的および心理的罰が与えられるとしたら、彼(彼女)らは直接怒ることを諦め、別の経路すなわち『受動的』攻撃行動で不満を表現するようになるとのこと。
参考:3)
PAPDを抱える人との関わり方
先述の通りPAPDとはつまり、重度の「ふてくされ」。
つまり、叱られた子供が【拗ねる・いじける・やさぐれる】ようなもの。不満や怒りの原因を聞いてあげるなど、「ふてくされ」た子供に対する接し方を考え、行動すると良いかもしれません。
ですが学生ならともかく、職場の社会人相手にこのような気遣いを常に心掛けるのもおかしな話。
受動攻撃が悪質な場合は責任者に相談して、指示を仰ぐようにしましょう。もしくは実際の被害予測や損失を提示し、根本的に理解するまで、適任者とマンツーマンで論理的に話し合ってもらうことが賢明です。あと、自己主張が難しい職場の雰囲気を変えてみるのも効果的。
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参考文献
1)
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
https://ja.wikipedia.org/wiki/
2)
Lumen Learning『Passive-Aggressive Personality Disorder (Negativistic Personality Disorder)』
https://courses.lumenlearning.com/abnormalpsychology/chapter/passive-aggressive-personality-disorder-negativistic-personality-disorder/
3)
wikipedia『Negativistic personality disorder』
https://en.wikipedia.org/wiki/